■■ カンボジア旅のおすすめ本 ■■
『カンボジア 運命の門』フランソワ ビゾ著 講談社 2,300円

カンボジア仏教の研究者であったフランス人の著書が経験したクメールルージュの時代と人間。スパイ容疑をかけられ著者は収容所に収容されます。いつ処刑されるか分からない、過酷な状況の中、彼の命を握る収容所長との交渉をくりかえすうちに奇妙な友情がめばえます。搾取される人民を救済するという理想に燃え、純粋で高邁な思想をもつこの収容所長とクメールルージュへの盲目的な信頼を理解できない著書はなんども衝突しますが、所長は著書の無罪に奔走し、やがて著書は解放されます。その後プノンペンが陥落、市内は恐怖につつまれ、フランス大使館へ国外脱出を求める、外国人、カンボジア人の政治家、高官で混乱状態におちいります。クメール語に堪能であった著書がクメールルージュとの交渉にあたるのですが、国外脱出できるのはパスポートをもつ外国人のみ。やがてパスポートを持たないもの、カンボジア人の配偶者がいるものは大使館の外へ、クメールルージュへ引き渡されることとなります。まさに大使館の門が生死をわける運命の門となったのです。その後著者はカンボジア国外へと脱出し、恐怖は記憶の中に封じ込められていたのですが、思わぬ形で彼に思い出させることとなるのです。あの不思議な友情を結んだ収容所長が生き残り、逮捕されたと聞くのです。彼はあの後、クメールルージュの公安最高司令官となり、ツールスレン収容所の責任者として4万人といわれる人々の処刑を命令する人物となっていました。逮捕された彼と間接的に連絡をとり、著者はいいます。所長は何もかわっていない、著書を信用し自分の身に危険が及ぶかもしれないなか無罪を主張し、解放した彼が、正義を信じ、組織を盲目的に信頼し、組織に忠実な彼が犯したことであったと。例えばあの時代に生まれ、あの状況にいたならばだれもが収容所長になりえたかもしれない。だからといって彼の罪が軽くなることなどありえないのだけれど。カンボジアで起きた歴史の惨劇ですが、結局は一人一人の人間のもつ善と悪の二面性、本性を問うていたのではないかと思います。そしてそれはなにもその時代に限ったものではなく、今を生きている私達にも問われることだと思います。
『カンボジアは誘う』平野久美子著 新潮社 1,600円

『チュガンニュ!』(おいしい!)をキーワードに豊かな自然に育まれたカンボジアの食生活、ライフスタイルを紹介しています。
農村地帯でのゆっくり時間と手間をかけてつくるハーブたっぷりの家庭料理からカンボジア風にアレンジされたフレンチ、ぷるぷる系のデザート、のんびりした時間が流れる、カフェ〜。。ね、なんだかカンボジアに行きたくなってきませんか?
食べ物だけでなく、カンボジアの雑貨についてもふれられています。素朴だけど手わざの感じられる雑貨達。値段も安く魅力的だけど、いざ買ってかえってみると、押し入れにいれっぱなし。そんなことありませんか?日本の家での雑貨達 のディスプレイの仕方や、手持ちの洋食器や和食器とのあわせ方などとても参考になります。
雑貨を作る人々や、伝統芸能、文化を復興しようとする人々にも著者の目はおよびます。貧困や人的資源の不足などの問題をかかえつつも、前へ前へ進もうとする今のカンボジアを感じられる一冊です。カンボジアへ旅行する方もそうでない方もぜひ。
『淡々有情』平野久美子著 小学館 1,500円

著者がパリで日本語を流暢に話すカンボジア人の老紳士と出会うところから物語ははじまります。
クメール料理のレストランオーナーである彼は、戦中の日本に南方特別留学生として来日し、その後カンボジアへ帰国、外交官として活躍しますが、内線でフランスへと亡命し、無国籍者として20年をパリで過ごします。
戦中の日本で生活し、我慢し、最後までがんばること、信念を貫くこと。そして国を愛すること。「日本人のこころ」をもったカンボジア人として生きていく彼には決して生き易いとはいえない人生が続きます。そこにはそんな彼を義母として生涯ささえ続ける日本人女性の存在がありまし た。
今の私達にはピンとこない「日本人の精神」。しかし彼は内戦の終わったカンボジアへ戻った後もこの心を持ち続け、自分を貫きます。
腐敗と賄賂の横行するなか、なんとか自分を見失わないよう、母国への貢献につくそうとする彼を待っていたのもは、、、。
人は哀れなエリートの末路だというかもしれません。でも自分の信念を貫き、どんな小さなことでもいい「自分にしかできないなにか」を探し求める彼とその義母の人生は貴いものだと思います。
どんな小さなことでもいい、「自分にしかできないなにか」ってなんなのか。自分自身への問いかけでもあります。
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